HOME > 一覧 > 詳細
「津居山かに」
【黒い粒】の正体
※画像をクリックすると大きな画像を見る事ができます

しばしば語られる【黒い粒】についての俗説…。

「これが付いてないとアカン!!」
などと当店店頭で力説されるお客様も少なくありませんが、
たいていのお客様は【黒い粒】が何なのかすらご存知ありません(*_*;

藻の一種・魚の卵・カニの卵とおっしゃる方もいらっしゃいました(^_^;)

じゃあ正体は何なのか?

答えは【虫の卵】なのです。

ページの一番下に画像を沢山載せていますのでソチラをご覧頂いた方が
分かりやすいかと思いますが、学術的な説明としては、

「環形動物門・ヒル綱・吻テツ目」に属する
標準和名【カニビル】 学名【Carcinobdella kanibir】

という虫です。
ってイマイチ分からないですね…。
書いておきながらなんですが、画像の方が分かりやすいです(^_^;)

名前に「ヒル」と付くように、頭部に吸盤上の「環帯」と呼ばれる部分があり、
これを使ってカニの甲羅に吸い付いているんですね。
とは言ってもカニの甲羅は硬いですから、体液を吸ったりする訳ではなく、
卵を産み付けるために吸い付いているのです。

わざわざカニに卵を産まなくても…って思われるかもしれませんが、
カニやカニビルの生息する海底の多くは「砂泥底」で、
卵を産むのに適した硬い岩などが少ない…。
そこでカニの甲羅が格好の産卵場所として使われているんですね♪
ちなみに普段は海底の砂泥の中に生息し、カレイなどの体液を吸っています。

海外では「シー・ライス(sea lice)」という呼び名が一般的なようで、
直訳すると「海の虱(シラミ)」ですね…。
シラミはどうかと思いますが(*_*;


さて余談はさておき、この「カニビル」と「カニの質」が関連付けて語られる。
その最大の理由は、カニが【脱皮】することにあります。

つまり、脱皮すれば甲羅に付いていたカニビルの卵も一緒に脱げてしまう
               ↓
脱皮直後は外殻が柔らかくて身の入りも悪い。(水ガニのように)
               ↓
という事は、卵が沢山付いていれば脱皮から時間が経っていて身の入りも良い!

って理屈なんですね…。
どうです? もっともらしくて「ナルホドー!」と言ってしまいそうですね。


ですがっ!


この卵。脱皮直後の水ガニにも【沢山付いてます】(^_^;)

カニの脱皮時期はおおよそ9月〜10月頃。
一方で水ガニの漁期は1月10日〜3月20日。
脱皮から漁獲までの期間は4〜7ヶ月という事になりますが、
このわずかな期間でも卵は沢山産み付けられている訳です。

上の理屈にある、「脱皮から時間が経過…」という部分。
パッと聞いたら脱皮から数年経っているような印象を持ってしまいますよね(*_*;
実際は、脱皮から数ヶ月で再び卵が産み付けられている訳です。

どうでしょう。甲羅に付いた卵で身の入りを判断出来ますか?

出来ませんよね。身の入りが悪くても卵は付いているんですから。

こんなデマのような情報が、いかにも真実であるかのように広まった背景には
販売業者側の思惑というのも大きく関係しています。

具体的に言えば、身の入りの悪いカニを安くで仕入れ、
「黒い粒が付いてるから、身の入りもバッチリですよ♪」って感じです。
カニの判別を知らないお客さんなら、コロッと騙されてしまいますね(~_~;)
特に【黒い粒】というパッと見て分かる部分ですから、
身の入りの悪い・手に持ったら軽さでバレるカニでも、
お客さんに触らせる事なく販売する事が出来てしまいます…。

カニの良し悪しというのは、【見ただけでは絶対に分かりません】。
必ず実際に【手で持って】確認して下さいね♪


さて、この【黒い粒の迷信】。
ここまで広まった原因は、先ほど書いた販売者側の思惑(悪意)と同時に、
テレビを始めとするメディアでも、こぞって取り上げられている事があります。

店頭で「この黒いのが付いてると良いのよね♪」とおっしゃるお客様には
事実を説明してアテにならない事をお伝えするのですが、
よく返ってくるのが、「テレビでやってたわよ!?」という一言…。

ハッキリ言ってテレビのカニ番組を作ってるのは、
【テレビのプロ】であっても【カニのプロ】ではありません。
取材先の販売業者の言う事を鵜呑みにして、トンでもない間違った情報を
そのまま放送することもしばしばです(*_*;

だから茹カニでカニスキを作ってみたり、
地ガニといいながら輸入カニが登場したりする訳ですね…。

メディアに限らず、ウチのようなホームページにしても、
伝える側の意図によって情報はどのようにでも操作できます。
差し出がましいようですが、可能な限り沢山の情報に触れていただき、
その中から信用に値すると判断された業者とお取引いただく。
それがベストだと思いますし、当店のページだけをご覧いただいて
ご注文頂くことは三代目の本位ではありません。
様々な業者のページをご覧頂いた上で当店をお選びいただく。
それこそが最大の喜びであり、目的です♪
ホームページも三代目もまだまだ未熟ではありますが、
日々努力しておりますので、今後とも温かく・厳しく見守って下さい<(_ _)>


またもや脱線してしまいましたが、【黒い粒】の続きです。
これが【カニビルの卵】であり、【身入りの判断材料にはならない】という事を説明してきましたが、もう一つの迷信。

【これが付いていると地物の証拠】

これについて説明させていただきます。

結論から言いますと、これもアテにはなりません…。
だって輸入カニにも付いてますから(^_^;)

【地物の証拠】という根拠になっているのは、
「カニビルが地ガニの漁獲域にしか生息していない」という理屈なんですが、
今までの経験では、【北朝鮮産】のカニにはほとんど付いていませんが、
【ロシア産】のカニにはよく付いています。
カニビルの生息域としては、日本近海のほかロシア・アラスカ等にも
幅広く生息していますので。
北朝鮮産のカニに付いていない理由は、北朝鮮沿岸のカニ漁獲域には「岩場」が多く、わざわざカニに産み付けなくてもナンボでも生む場所があるためだと
思われます。
北朝鮮産のカニに見られるフジツボのような【白い貝殻】も、
「岩場」であるなら不思議ではないですね。
これも下に画像を載せていますのでご参照下さい。

ただ一概に迷信だと言い切れないのは、付いている卵の量(数)を比べると、
確かに地物(津居山かに)の方が全般的に多いんですね…。
海域によってカニビルの生息状況に差があることは事実でしょうが、
100%確実な判別方法ではありませんし、【身入り】と同様に輸入カニを地物と
偽って販売する温床にもなりますので、判別方法としては危ないですね(*_*;


ところで「カニビル」に注目して商品一覧の画像をご覧頂くと、
何かに気付きません?

ヒントは【「生」と「茹」での違い】なのですが、分かります?
って別のページでも同じ質問をしてますが(^_^;)

答えは、「茹」よりも「生」の方がカニビルの卵が多いんですね。

なぜかと言いますと、茹でた後のカニには灰汁(アク)が沢山付着していますし、
生カニに付いている泥がお湯に混ざり、再び表面に付く事もしばしばです。
それらをキレイに洗い流してからお売りするのですが、洗う際にはタワシを
用いてゴシゴシ擦りますので、その際に卵も一緒に取れてしまうのです。

ちなみにある時、三代目が茹でたカニを洗っていると、
たまたま店に来ていた近所のおっちゃん(同業者)が、
「そんなに擦ったら黒いのが取れるぞ! お客さんはこれを見て買うんだから!」と、かなりアツく説教してくれました(*_*;
「そうなんですか〜」と愛想笑いをしつつも、
三代目のタワシに力がこもったのは言うまでもありません(^_^;)



さて、そんなこんなで【黒い粒】の迷信について書いてきましたが、
この類の迷信というのは他にもキリがないほどありまして、

・【満月の夜はカニの味が良くなる・悪くなる】
→確かに「月の満ち欠け」と「汐の干満」には関係がありますし、
 カニの中には満月の夜を選んで産卵するものもいます…。
 強引に結びつければ、産卵によってセコカニの味が影響を受けることも
 考えられますが、そもそもセコカニが満月の夜に産卵するかどうかは不明…。
 三代目が食べた限りでは、味は変わりません(^_^;)

・【新鮮なカニは身が取り易い】
→「身が取り易い=身入りが悪い」って事だと思いますが…(*_*;
 身入りの良いほど・新鮮なほど、殻に身が吸着して食べにくいものです。
 
・【足だけのカニは、紙で包んであるものが良い】
→「津居山かに」は足だけでは販売しません(*_*;
 ズワイガニに関しては、水ガニを除いてほぼ100%冷凍カニです。
 紙で包む理由は、単純に見栄えを良くするためと、
 切り口が空気に触れるのを防ぐためです。
 カニの品質とは関係ありません…。

てな感じで、荒唐無稽な迷信が幅を利かせてます(^_^;)
「馬鹿馬鹿しい」と思われる方もいらっしゃるかとは思いますが、
本気にされている方も決して少なくないのが実情です(*_*;

どんな場合でも、販売業者が【事実】を述べているのなら、
その【根拠】を論理的・科学的に明示できる筈ですよね。

購入商品について説明を求めるのは消費者の大きな権利ですし、
販売者はそれを拒む事は出来ません。

何も聞かずに値段だけを見て購入されるのではなく、
値段の裏にある【事実】を見て購入していただければ、
家に帰ってガッカリすることも無いかと思います♪

どんな事でもご質問いただければ、三代目が「待ってました!」とばかりに
お答えしますので、ご遠慮なくドウゾ(^^)v


ただし、かなりの長文です(^_^;)


※2004年2月5日付け追記
↑で、
>【北朝鮮産】のカニにはほとんど付いていませんが〜
と書きましたが、カニビルが沢山付いた北朝鮮産のカニを見つけまして…(^_^;)

正確な理由は分かりませんが、北朝鮮産であっても漁獲海域によっては
カニビルが付着している場合があるということですね…。

↓に画像を追加しましたので、ご参照下さい。
ちなみに、ちょっとしたクイズ形式になっています♪
分かるかな〜(^^ゞ



セリ直後の「津居山かに」。
カニビルとその卵です。
upがコチラ。
吸盤で吸い付いています。
甲羅から剥がしてみました。
大きな物・小さな物…。
様々です。
こんな可愛らしい(?)物も。
卵から孵化して間もない
カニビルですね。
「環帯」と呼ばれる、
頭部の吸盤上の部分です。
人に吸い付いたという話は
聞きません(^_^;)
一つだけ剥がしてみました。
中には孵化前のカニビルが…。
あまり気持ちの良いもんじゃ
ありませんね(*_*;
上は「津居山かに」。
下は「水ガニ」です。
水ガニにも沢山付いてます…。
脱皮から半年前後でこの状態。
これでも身入りの判断材料に
なりますか?
度々登場している
生カニの産地比較画像。
上から津居山・北朝鮮・
ロシアの順です。
一番下のロシア産にも
付いてますよね。
ロシア産のupです。
少量でも付いている以上は、
地物の判別材料としては
アテになりませんね…。
生カニの場合、こんな風に
ビッシリ付いている事も
よくあります。
茹カニの場合、茹でた後で
洗い流しますので、卵も
剥がれる事が多いです。
跡が残っているのが見えます?
カニと同じく底引き網で
漁獲される「赤バイ貝」。
裏返すとこの通り。
カニビルの卵が付いてます。
「カニビル」という名ですが、
カニだけに付く特別な虫では
ない訳ですね。
ちなみに白っぽいのは
スポンジ状の海藻です。
※2004年2月5日付け追記
【Q】
コチラの4匹のカニ。
津居山産と北朝鮮産が
混ざっています。
見分けられます?

ちなみに青いタグは
隠してあります♪
【A】
解答はコチラ♪
一番上だけが津居山産です。
カニビルを元に産地を特定
するのは危ないですね(*_*;

戻る

竹内魚店
兵庫県豊岡市城崎町湯島117 TEL.0796-32-2350 FAX.